祈るな

Color my life with the chaos of trouble.

何者にもなれないわたしたち

 

二十歳の誕生日、両耳たぶに穴を開けた。別に、前々から決めていたわけでも、死ぬほど開けたいわけでもなかった。ただ、好きなアイドルが画面の中で、ピアス開けたんですと微笑んでたから。いいなー、わたしも、と思って。それだけ。東京、病院、ピアスとgoogleで検索をかけて、上から3番目にヒットした病院に足を運んだ。わたしは、人生にストーリーが欲しかった。

 

普通の女子高生だった。部活にいそしむような。赤点に怯えるような。放課後、窓が受け止めきれないほど夕日が差し込む教室の中で、机に座ってくだらない話をするような。わたしたちは未来を信じていて、それが輝いたものであることを疑わなく、自由じゃないのに自由だった。女子校は、女子が女子であるための場所ではなく、人が人であるための場所であったのだと、気付いたのは卒業してからだった。

「みなさんは、卒業してから寂しくなる。たくさんの人と出会い、自分とは違った人間をたくさんたくさん見て、この3年間が恋しくなる。早く卒業したいと思っているでしょう?見てなさい、その時が案外すぐ来るから。」と、微笑みながらきっぱり言い切ったベリーショートの校長の顔が浮かぶ。先生、わたしあの時笑ったけど、本当に、本当にそうですね。「それから、他の女の子は大口を開けてアッハッハと笑ったりしないものですよ。」本当にそう。先生、わたしもう、地球の裏側まで届くような声で笑えなくなっちゃった。

高校生のとき薄暗いファミレスのドリンクバーで遠い未来の話を何時間もしていた私たちは今、肩書きだけ大人になって、ピカピカの光でいっぱいの居酒屋で薄いサワーを飲みながら、過去の輝かしい思い出に浸っている。お酒を抜くために井の頭公園の池の周りをぐるぐる回りながら、情けなくてちょっとだけ涙が出た。燃えるような日々が、とても恋しい。

 

 

隣のブースから口をもごもごさせながら出てきて、「あんま痛くなかったじゃん」「しゃべんのむずくね」「食べるときこまんね」と言いながら去っていく女子高生たちを、両耳たぶに麻酔をかけたわたしが見送った。大人が大人だなんて、嘘だ、と思う。いつだって強くありたい。

  

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サークルのために書いたものを、どうにかして残したかったので、ここに。お題は「高校生活」。